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作家シリーズ

彫刻家:五十嵐威暢~つくることは、生きること~2020夏:果てのないモノがたり【後編】

2020/08/29

4.完成・設置 -果てのないモノがたりのはじまり

8月4日、ついに窯出しの日。
あたたかい白をまとったテラコッタ作品が並びました。
生の土の時とはまた違い、やわらかく優しい雰囲気を感じます。

「五十嵐先生の作品を設置することになって、建物の内装がずいぶん変わった。こんなに変わるものかと…(笑)学生たちにこの作品に託された想いを伝えられたらと思います。」
作品の検品にお越しいただいた桃山学院 中辻常務理事からの言葉。

現地の照明を想定したテストや取り付けについての説明・確認を行い、あとは設置を待つばかりです。

  • 【質感を確かめる桃山学院 中辻常務理事】 
  • 【竹中工務店 長谷部所長に取り付け方法を説明】 

8月25日に行われた設置工事では、事前に工場で行った取り付けのシミュレーションの際にけがいた線に合わせて、最下部から順番に取り付け。
重みのあるパーツを、ひとつひとつ人の手で慎重に扱い、位置を微調整しながら、作品を正確に美しく設置していきます。

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ついに、エントランスロビーの壁面にとりついた「環」。
五十嵐氏の想いがつまった「環」が、あたたかく人々を出迎えます。
果てのないモノがたりが、今、ここから始まります。

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■おわりに
“特別”の意味 -作品に込めた想い

 
今回の作品「環」が、なぜ、特別な作品なのか。
まずは、この円という形状がとても特別だと五十嵐氏は語ります。
 
「円自体の持つ意味を考えたとき、キリスト教や仏教でも聖なるものの後ろには光の輪があったり、禅でも円は悟りの象徴とされているよね。そういったところからも円は完ぺきを意味する強い形。しかし、強すぎるが故に、なかなかつくってみたいと思っていても、つくれない形状だった。」

確かに円は求心性が高く、注目を集める形です。

今までの五十嵐氏の作品のイメージというと、細長い形状のテラコッタを組み合わせて構成する作品が主でした。

【The mother earth / 赤坂Kタワー (東京都)/ 2011年 】
【テルミヌスの森/ JRタワー パセオ(北海道) / 2011年 】

 

「環」は、初めて設置される円形の作品になります。

「今回は、作品を設置いただく桃山学院の皆さん、建築を設計した竹中工務店の皆さんが、この作品のために場所を準備してくれて、円という強い形にふさわしい空間を創りあげてくれた。これは、皆の気持ちがひとつにならなければ、絶対に叶えられない。そう考えて、特別な作品、特別な仕事になった。」

  • 【制作に立ち会った桃山学院、竹中工務店、TAKプロパティの方々と弊社スタッフ】 

建築空間や環境とそこに設置する作品という視点で、ものづくりをされている五十嵐氏にとって、作品が設置される場所は特に大切に考えられています。

「環」に込めた想いについて、五十嵐氏は、次のように語りました。


途切れることなく繋がる果てのない環、それを人生としてとらえる。
生まれて、学んで、育って、社会に出て、仕事をしたり、結婚したり、新しく家族ができたり…いろんな経験がこれからきっと待っている。
そんな若い人たちが育つ場所だから、人から人へと受け継がれていく終わりのない人生の環、この作品を道しるべにエールを送りたい。
日常に落ちている小さなできごとを拾って、それは、嬉しいことであったり、悲しいことであったりするんだけれど…そうやって、ひとつひとつ積み上げて、自分だけの物語をつくりあげていってほしい。

  • 【制作後、笑顔を見せる五十嵐氏】 
  • 【作品に記されたサイン】 

この作品には、小さなできごとが無数にしるされています。
果てのない人生の環に刻まれた物語を、訪れる人々にやさしく語り続けます。
「環」からあふれる力、あたたかさは、桃山学院で学ぶ学生たちの背中を押してくれる存在となるのではないでしょうか。





彫刻家・五十嵐威暢~つくることは、生きること~
2020夏 果てのないモノがたり
- Fin -



❖今回のレポート掲載に際し、関係者の皆様のご協力、写真提供をいただき、厚く御礼申し上げます。
 
 
 

 
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